特許出願前に公開しても大丈夫?SNS・展示会・販売後の注意点と判断基準

特許出願前にSNSや展示会で発明を公開して不安な方へ、公開に当たる行為、新規性喪失の例外、海外出願の注意点と相談前の確認事項を解説します。

 

 

特許出願前の公開は原則として避けたい重要な注意点

 

 

出願前に公開すると新規性を失う可能性

特許を取得するためには、発明に「新規性」があることが重要です。簡単にいえば、特許出願をする前に、その発明が世の中に知られていないことが基本となります。

そのため、発明の内容をWebサイトに掲載したり、展示会で公開したり、商品として販売したりした後に出願すると、「すでに知られていた発明」と判断される可能性があります。

特許出願を検討している段階では、「正式発表ではないから大丈夫」「少しSNSに載せただけだから問題ない」と自己判断しないことが大切です。問題になるのは、企業側が「発表したつもりがあるか」ではなく、第三者がその発明の内容を知り得る状態になったかどうかだからです。

公開前であれば、まず特許出願の必要性を検討し、必要な権利化を進めてから展示会や販売、広報活動へ進むのが基本的な考え方になります。

 

これから公開する人と、すでに公開した人の判断基準

同じ「特許出願前の公開」という悩みでも、公開前なのか、すでに公開済みなのかで取るべき行動が変わります。

特に整理したいのは次の2つです。

  • これから公開する場合
    • SNS投稿、展示会、商品発売、クラウドファンディングなどの予定日を確認します
    • 公開前に特許出願できるか検討することが基本です
    • 海外での権利取得を考えている場合は、国外への影響も含めて確認が必要です
  • すでに公開した場合
    • 最初に公開した日を確認します
    • どこで、誰に、どの内容まで公開したか整理します
    • 新規性喪失の例外が利用できる可能性を検討します
    • 複数の公開がある場合は、それぞれの日時と内容を確認します

特に公開済みの場合は、「何となく先月公開した」という状態では判断しにくくなります。Webページの公開日、SNS投稿日、展示会開催日、販売開始日など、確認できる記録をできるだけ残しておくことが重要です。

 

「出願前の公開」と「出願後の出願公開」の違い

「特許の公開」と聞くと、特許出願後に行われる「出願公開」と混同する方もいますが、今回問題となる「出願前の公開」とは別のものです。

通常、特許出願をすると、原則として出願から1年6か月後に出願内容が公開されます。これは特許制度上予定されている公開です。

一方で注意したいのは、出願する前に自分で発明の内容を公にしてしまうケースです。

たとえば、新製品を発売する、技術情報をWebサイトへ掲載する、展示会で構造を公開するといった行為です。こちらは特許出願より前に発明が知られるため、新規性に影響する可能性があります。

「特許はいずれ公開されるのだから、先に発表しても同じ」ということではありません。順番が重要です。

 

 

SNS・展示会・販売・商談など公開に当たる行為の確認ポイント

 

 

Webサイト・SNS・クラウドファンディングでの公開

WebサイトやSNSで不特定多数の人が閲覧できる状態にした場合、発明の公開として検討が必要になります。

たとえば、Instagram、X、YouTube、自社サイト、ブログなどへ新商品の技術的特徴を掲載するケースです。投稿そのものが短くても、画像や動画から発明の内容が理解できる可能性があります。

クラウドファンディングにも注意が必要です。支援を集めるためには、商品の仕組みや特徴、使用方法などを詳しく説明することがあります。その結果、特許出願前に技術的な内容まで公にしてしまう可能性があります。

重要なのは、投稿した媒体の名前だけで判断しないことです。

たとえばSNS投稿でも、単なる商品名の告知なのか、内部構造や技術的特徴まで説明しているのかで状況は変わります。「どこに載せたか」と「何を載せたか」の両方を確認する必要があります。

 

展示会・販売・学会発表で注意したい公開時点

展示会への出品、商品の販売、学会発表も、出願前公開として注意が必要な代表例です。

展示会では、完成品を置いただけなのか、内部構造まで見せたのか、実演によって技術内容を理解できたのかによって確認すべき点が変わります。

販売についても同様です。商品を購入・分析することで発明の内容を把握できる場合などは、新規性への影響を検討する必要があります。

研究者の場合は、学会発表の日だけでなく、予稿集や論文がそれより前にWeb公開されるケースにも注意が必要です。「発表日はまだ先だから大丈夫」と思っていても、資料が先に公開されている場合があります。

企業でも研究機関でも、発表日だけではなく、第三者が実際に技術内容へアクセスできるようになった時点を確認することが重要です。

 

NDAを結んだ商談と秘密保持義務の考え方

取引先や共同開発先へ発明を説明した場合、必ず公開になるとは限りません。

重要になるのが、相手に秘密保持義務があったかどうかです。

たとえばNDA(秘密保持契約)を締結し、限られた関係者だけに秘密情報として技術を説明した場合には、不特定多数へ公開した場合とは扱いが異なる可能性があります。

一方で、「取引先だから当然秘密にしてくれると思っていた」「口頭で内緒にしてほしいと伝えた」といった状況では、事実関係の確認が必要になります。

商談後に特許出願を考える場合は、NDAの有無だけでなく、誰が参加していたか、どの資料を使ったか、資料の持ち帰りがあったか、秘密として扱う合意があったかなども重要です。

私たちは、単に「商談したから公開」「NDAがあるから絶対に問題ない」と決めつけず、実際の説明状況を整理することが大切だと考えています。

 

 

すでに公開した場合に確認したい新規性喪失の例外

 

 

日本で新規性喪失の例外を検討できる条件

すでに発明を公開してしまった場合でも、直ちに特許出願を諦める必要はありません。

日本では、一定の条件を満たす場合、特許法30条の「新規性喪失の例外」を利用できる可能性があります。発明者や出願人の行為によって公開されたケースなどでは、原則として公開から1年以内に出願することが重要になります。

さらに、出願時に新規性喪失の例外の適用を受けるための手続を行い、原則として出願から30日以内に公開の事実を証明する書面を提出する必要があります。

つまり、「1年以内に出願すれば自動的に救済される」という制度ではありません。

公開した日時や内容を正確に把握し、必要な手続を出願と合わせて進める必要があります。すでに公開している場合は、時間が経ってから考えるより、早い段階で状況を確認する方が判断材料を集めやすくなります。

 

「公開から1年以内なら大丈夫」と言い切れない理由

新規性喪失の例外には重要な注意点があります。

自分自身が公開した発明について例外の適用を受けられたとしても、その間に第三者が同じ発明について先に出願したり、別の情報として公開したりしていれば、特許を取得できない可能性があります。

新規性喪失の例外は、「公開しても1年間は出願を後回しにできる制度」ではありません。

たとえば展示会で新技術を発表した後、「1年以内なら大丈夫」と考えて数か月待っている間に、他社が関連技術を出願する可能性もあります。

そのため、特許取得を希望しているのであれば、新規性喪失の例外を前提に公開するよりも、できる限り公開前に出願することが基本です。

すでに公開してしまった場合は、例外制度が利用できるかだけを見るのではなく、公開後の状況も含めて検討する必要があります。

 

複数回公開している場合に整理したい情報

一度だけ公開したケースより、複数の媒体や場所で公開しているケースの方が整理は複雑になります。

たとえば、

  • 3月に取引先へ説明した
  • 4月にSNSへ画像を投稿した
  • 5月に展示会へ出品した
  • 6月から販売を始めた

という場合です。

このようなケースでは、「最後に展示会へ出した日」だけではなく、それ以前の公開まで確認する必要があります。

また、同じ商品についての公開でも、SNSでは外観のみ、展示会では内部構造まで公開しているなど、公開された技術内容が異なる場合があります。

相談前には、できる範囲で次の情報を整理しておくと確認が進めやすくなります。

  • 最初に公開した日
  • WebサイトやSNSのURLと投稿日
  • 展示会名と開催日
  • 当日配布した資料
  • 商品の販売開始日
  • 学会資料や論文の公開日
  • 商談資料とNDAの有無

すべて正確に分からない場合でも、分かる資料から整理していくことが大切です。

 

 

国内出願だけでなく海外出願も考える場合の注意点

 

 

日本の例外制度が海外でも同じとは限らない点

海外でも特許を取得したい場合は、国内出願だけを考える場合より慎重な確認が必要です。

日本には新規性喪失の例外制度がありますが、海外の制度が日本と同じとは限りません。公開後に出願できる期間や、例外の対象になる公開行為、必要な手続などは国や地域によって異なる場合があります。

そのため、「日本では例外が使えそうだから、海外でも問題ない」と判断することは避けた方がよいでしょう。

特に将来的に海外販売や海外進出を考えている発明では、国内での展示会やWeb公開が海外出願へ影響する可能性も含めて検討する必要があります。

国内だけでなく海外も含めて発明を保護したい場合は、公開前に「どの国で権利化したいのか」まで整理しておくと、出願方針を検討しやすくなります。

 

海外展開を考える発明ほど公開前の相談が重要になる理由

新商品を海外へ販売する予定がある場合や、外国企業との取引を予定している場合は、発表や営業活動の前に知的財産の方針を確認することが重要です。

企業活動では、「展示会の日程は決まっている」「営業資料は完成している」「クラウドファンディングの公開日を変更できない」といった事情もあります。

その場合でも、公開する内容を整理したり、出願を先に進めたりすることで対応できる可能性があります。

開口国際特許事務所では国内だけでなく国際出願にも対応しており、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ圏をはじめ複数の国・地域での登録実績があります。また、英語に対応できる弁理士が在籍し、日本語から英語への翻訳を含めた国際出願の支援も行っています。

海外での権利取得を考えている場合は、公開してから対応を考えるのではなく、公開時期と出願時期を一緒に検討することが重要です。

 

 

自分で確認できる範囲と弁理士に相談したいケース

 

 

自分で整理しておきたい公開日時と資料

公開前・公開後のどちらの場合でも、自分で最初にできるのは事実関係の整理です。

法律上どのように評価されるかまで自己判断する必要はありませんが、「いつ」「どこで」「誰に」「何を」見せたかは確認しておくと相談がスムーズになります。

特に公開済みの場合は、SNS投稿を削除する前に投稿日や内容を確認したり、展示会の資料やメールを保存したりすることも重要です。

自分で判断しやすいのは、公開日や資料の所在といった事実関係です。一方、その行為によって新規性を失ったのか、新規性喪失の例外が利用できるのか、海外出願へどう影響するのかといった判断は専門的になります。

「公開したかどうか自体が分からない」という段階でも、資料を確認しながら整理することは可能です。

 

開口国際特許事務所で相談できる特許出願と国際出願

開口国際特許事務所では、国内外の特許出願に必要な手続を代理し、出願書類の作成から出願後のフォローまで対応しています。特許だけでなく、意匠・商標などの知的財産についても相談できます。

発明の内容を特許出願につなげる際には、技術的な特徴を正確に把握し、それを出願書類として適切に表現することが重要です。当事務所では、本田技術研究所の特許室での勤務経験を持つ弁理士が、技術内容の把握と出願書類の作成に携わっています。

また、Zoomを利用した無料オンライン相談に対応しており、全国から相談できます。対面相談が必要な場合は出張について相談することも可能です。

「特許を取れる発明かまだ分からない」「公開してしまったが何から確認すればよいか分からない」という段階でも、まず状況を整理するところから相談できます。

 

公開前・公開後の相談をスムーズにする準備

特許出願前の公開について相談するときは、発明の説明だけでなく、公開状況が分かる資料を用意すると確認がしやすくなります。

特に準備したいのは次の情報です。

  • 発明や商品の概要が分かる資料
  • 最初に公開した日、または今後の公開予定日
  • WebサイトやSNSのURL
  • SNSや動画の投稿日時
  • 展示会や学会の開催日
  • 配布したパンフレットや発表資料
  • NDAや取引先との契約書
  • 商品の販売開始日
  • 希望する海外出願先

すべて揃っていなくても問題ありません。分かる範囲から整理し、重要な資料を後から確認していくこともできます。

特に展示会や商品発売の日程が迫っている場合、海外での出願も考えている場合、すでに複数回公開している場合は、早めに相談することで検討できる選択肢を整理しやすくなります。

 

 

特許出願前の公開に関するよくある質問

 

 

特許出願前にSNSへ投稿すると特許は取れなくなりますか?

不特定多数の人が閲覧できるSNSへ発明の技術的内容を投稿した場合、新規性を失う可能性があります。

ただし、投稿したという事実だけで一律に判断できるわけではありません。画像や動画、文章からどこまで発明の内容を理解できる状態だったかを確認する必要があります。

すでに投稿している場合は、投稿日、URL、投稿内容を保存したうえで、新規性喪失の例外を利用できる可能性を含めて検討します。

 

商品を販売した後でも特許出願できる可能性

販売後でも、状況によっては特許出願を検討できる可能性があります。

ただし、販売によって第三者が発明の内容を知ることができた場合には、新規性への影響が問題になります。また、自分自身による販売であっても、新規性喪失の例外を利用するためには期限や必要な手続があります。

販売開始から1年以内だから必ず特許を取得できるという意味ではありません。販売開始日や販売した商品の内容を確認し、できるだけ早く判断することが重要です。

 

展示会で見せただけの場合の新規性への影響

展示会で発明を展示した場合も、新規性に影響する可能性があります。

ただし、単に製品の外観だけを見せたのか、内部構造や技術的な仕組みまで理解できる状態だったのかで状況は異なります。

展示会後に相談する場合は、展示品の写真、説明パネル、配布資料、会場で行った説明内容などを整理しておくと確認しやすくなります。

また、展示会の前にWebサイトやプレスリリースで製品を発表していた場合は、展示会より前の公開についても確認が必要です。

 

NDAを結んだ相手への説明は公開になる?

NDAを結んで秘密保持義務を負う相手だけに発明を説明した場合、不特定多数への公開とは異なる判断になる可能性があります。

ただし、「NDAがあるから何を説明しても問題ない」と一律に判断することは避けた方がよいでしょう。

契約の内容、説明した相手、説明資料の扱い、第三者への開示制限などを確認する必要があります。NDAを締結していない場合でも秘密保持義務が問題になるケースはあるため、実際の商談状況に基づいた確認が必要です。

 

学会発表後やクラウドファンディング公開後の相談時期

学会発表やクラウドファンディングで公開してしまった場合は、できるだけ早く公開状況を整理することをおすすめします。

学会では発表日より前に予稿集や論文が公開されていることがあります。クラウドファンディングでは、プロジェクトページに技術的な説明や動画が掲載されている場合があります。

新規性喪失の例外には期間と手続が関係するため、「まだ数か月しか経っていないから後で考える」と先送りするメリットは大きくありません。

いつ、どの媒体で、どの内容まで公開したのかを整理し、国内出願だけでなく海外出願の希望がある場合はその点もあわせて相談すると、今後の対応を検討しやすくなります。

 

特許出願前の公開で迷ったときの確認ポイント

  • 特許出願前に発明を公開すると、新規性を失って特許を取得できなくなる可能性があります
  • 特許取得を考えている発明は、できる限り公開前に出願を検討することが基本です
  • SNSやWebサイトへの掲載も、内容によっては発明の公開として問題になる可能性があります
  • 展示会では、製品を見せたかだけでなく、技術内容を理解できる状態だったかを確認します
  • 商品の販売によって発明の内容を把握できる場合も、新規性への影響を確認する必要があります
  • 学会発表では、発表日より前の予稿集や論文の公開時期にも注意が必要です
  • NDAのある商談は、不特定多数への公開とは異なる可能性がありますが、契約内容や説明状況の確認が必要です
  • 日本では一定の条件を満たせば新規性喪失の例外を利用できる場合があります
  • 新規性喪失の例外は「公開から1年以内なら必ず特許が取れる」という制度ではありません
  • 第三者による先の出願や公開があれば、例外を利用しても特許を取得できない可能性があります
  • 複数回公開している場合は、それぞれの公開日と公開内容を整理することが重要です
  • 海外では日本と同じ例外制度が使えるとは限らないため、海外出願を考える場合は特に注意が必要です
  • 相談前には公開日、URL、展示会資料、販売開始日、NDAなどを整理しておくと確認がスムーズです
  • 開口国際特許事務所では国内外の特許出願や国際出願について相談できます。
  • 公開前でも公開後でも、判断に迷う場合は早い段階で状況を整理するところから相談できます